コレラの時代の愛

マイク・ニューウェル監督の最高傑作！
名優たちが紡ぐ50年以上に渡る愛の物語　

© Copyright 2007 Cholera Love Productions，LLC ALL RIGHTS RESERVED．

　ノーベル文学賞受賞者のコロンビア人作家ガブリエル・ガルシア＝マルケス。彼ほど世界中に影響を与えたラテン文学作家はいないだろう。同じくノーベル文学賞作家の大江健三郎もガルシア＝マルケスからの影響を公言しているし、作家・詩人・映画監督の寺山修司はあの名高き『百年の孤独』を『さらば箱舟』として映画化した。その他、中上健次や筒井康隆もその薫陶を大いに受けている。最近では、『エレンディラ』の日本人演出家・キャストによる舞台化も成された。文化・言語の枠を飛び越える訴求力をもった大文豪、それがガルシア＝マルケスだ。

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　本作は、『百年の孤独』と並ぶ代表作である同名長編小説を原作とした半世紀を越える純愛を描いた恋愛大河ドラマだが、当初、ガルシア＝マルケスは本作の映画化に消極的だったという。監督・脚本家・俳優・映画評論家の顔を持つ彼は、自作の映画化に大変慎重な作家としても知られており、とりわけ有名な本作を、アメリカ資本によってイギリス人の監督が全編英語のセリフを用いて映画化するということに難色を示したというのだ。これは自作に対する愛着の表れであり、同時に故郷である南米ラテン文化に対する親愛の情と責任感の表れでもある。

　しかし、プロデューサーは諦めることなく1年間に及ぶ粘り強い交渉を続けた。かくして、「一切の妥協をせず、原作に忠実な映画化を」という言葉を受けたガルシア＝マルケスは、遂にその首を縦に振ったという。

　物語は51年9ヶ月と4日、男：フロレンティーノは待ち続けた。622人の女に愛されてもなお忘れられない初恋の女性：フェルミーナを……というもの。この大恋愛劇の映画化に際して、主人公のフロレンティーノに『ノーカントリー』でアカデミー賞助演男優賞に輝いたスペインの名優ハビエル・バルデム、ヒロインのフェルミーナにイタリア映画界の花弁ジョヴァンナ・メッツォジョルノが扮しているほか、アメリカ、イギリス、ブラジル、コロンビアなどから随一の演技派キャストを起用。スタッフも『フォー・ウエディング』『フェイク』のマイク・ニューウェル監督以下、世界中から一級の人材が招かれている。

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『夜になる前に』『海を飛ぶ夢』『ノーカントリー』と続いた目覚しい活躍振りで、今や世界的名声を博しているハビエル・バルデムが、本作でも目を見張る名演を見せる。600人を超える女性たちと肉体関係を重ねていながら、フェルミーナへの執着を <純愛> であることを観客に納得させることは大変困難であろう。しかし、バルデムの瞳に宿る光には大いなる説得力がある。フロレンティーノの女性遍歴は放蕩と言って間違いないものではあるが、心の貞節を手放してはいない。バルデムの瞳が示す本作の魂をこそ理解していただきたい。ここが本作の肝である。

　原作の舞台であるコロンビア・カルタヘナにロケしたという撮影が、情感豊かな音楽や、徹底した時代考証と相まって素晴らしい効果を挙げている。また、助演陣も揃って好演だが、ガルシア＝マルケスの著作に通低する巨大な母性を一身に体現したブラジルの名女優フェルナンダ・モンテネグロが群を抜いて素晴らしい。

　文句無く、マイク・ニューウェル監督の最高傑作である。格調高き愛の名編がここに誕生した。

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