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去年は不摂生を重ねに重ねて10kg増量、何とかせねばとダイエットに挑戦した。そして半年後に気がつけば10kg減量。何事もやってみるものである。何だか自慢話みたいになっているが、ここで言いたいのは食事のことだ。色色やっていると、食べ物への傾向が分かってくる。まず、以前よりも食事の許容量が増えている。そして、美味いものを少しずつ食べたいと思うようになっている。普段暮らしでは食べ物なんてエサかエンジンかと淡白にも程があるが、時々外食に連れ立つといっちょまえにこだわりを見せるのだ。最近では自炊にも手間をかけるようになってきていて、いいのか悪いのか…当初のダイエットはどこに行ったんだ。
ここにきてやっと、本作『愛がなくても喰ってゆけます。』のポイントが自分の中で急上昇している。これは「男同士のアナルセックスなどを描いて生計を立てる」マンガ家(…なんてミもフタもない言い方だろう)YながFみが食べ物の店を紹介する作品。すっぴんがエラいことになってる+よく食べこぼす+結婚できなそう、そんな困った方が15回にわたって美味しい店をめぐるのだが、彼女の食べ物のこだわりは半端ではない。
『西洋骨董菓子店』で見せた、“読んでて食べたくなる感じ”が今回も存分に発揮されている。何といっても食事中の表情がたまらない。食べて泣くほど感動することもある。あまりに美味しそうで幸せそうな顔をしているので、読んでいるこちらもつい引き込まれて笑ってしまう。
昔だったら“食べ物紹介マンガ”という時点で興味を失っていたが、改めて読んでみて本作の魅力がじわじわと伝わってくる。このジャンルでは食べ物の描写の巧さは前提条件である。美味そうに見せる努力は食べ物の描写に注がれるものだが、よしなが氏はそれ以上に“食べる人”を描く。誰かと一緒に、食べる。他愛もない話を交わし、その中で少しずつ食べ物へと近づいて行って、そして食べ物のおいしさを誰かと分かち合う。「おいしーね!」その言葉が満足げな表情とともに交わされる。本当においしそうだ。Yながが食事中にうんちくたれ気味なのも、言うほどうざったく感じない。
作者の食べ物へのこだわりが注目されたのか、現在モーニングでは「昨日何食べた?」が連載中である。しかし「愛が…」が連載されたのは、性描写を含む作品中心の雑誌エロティクス・エフ。色気といえばYながの谷間くらいなものだ。しかし、食事のシーンはエロい、と言われた方もいる。そこまで見越しての掲載ならば……あなどりがたし、エロティクス・エフ。