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日夜、己の体に流れる正義を信じて走り続ける人々……それが正義隊である。アックスに連載されている本作は、後藤友香氏自身が“正義隊”という活動団体を詳細に描いたものだ。爆弾男、魔女、宇宙人などさまざまな敵に隊員は立ち向かう。隊員は幾度となく危機に見舞われるものの、勇敢にも次々と敵を撃退していく。作者は述べる。
作者は正義隊の壮大な物語を追って、作品を描き続けているのだ。
マンガの面白さは必ずしも画力に左右されない…とは思っているが、どうしても選ぶ基準がその巧拙に頼りがちになる。繊細な表現に秀でていれば、読者は登場人物の思いや微妙な情感をくみとれるだろう。デッサンが優れていれば、作品の世界観がリアリティをもって感じられるだろう。何より、マンガのいわゆる“文法”を熟知・修得していれば読者はたやすく内容を理解できることだろう。だからこそ、そういった技術はマンガを評価する基本条件ともなる。
しかし後藤氏は、そういった既存の“文法”に頼らずに自力で作品を作り上げている。下書きの時点から、ほとんど独力でやってこられたのではないだろうか。残念ながらここでは技術面で優れた点を挙げるのは難しい。だがぜひとも紹介しておかねばならないのが、セリフの秀逸さだ。
即答である。魔女キャンベルの恫喝に、新人隊員の元子はひるむことなく応酬する。隊員全てが、自分自身と他の隊員にゆるぎない信頼を持っている。正義に向かって突き進む、そんな彼らの姿が、作者には魅力と映ったのかもしれない。
『正義隊』は、花くまゆうさくやしりあがり寿らの作品に見られる、いわゆるヘタウマでもギャグでもない。表現技術、背景説明など一切の虚飾を排し、ひたすらに正義隊の戦いが描かれる本作にはなにやらただならぬ緊迫感が漂っている。もはやこれは妄想などではなく、作者の現実なのではないだろうか。後藤氏の眼に映るむき出しの現実が、マンガという形を取って報告されているのである。
正義隊を見つめつづける後藤氏の姿は、主人公の勇敢な新人隊員元子をも思わせる。2巻では、隊員たちが戦う敵の姿がより明らかになり、さらにパッションを帯びて物語が進む。いったい本作はどこへ進んでいくのだろうか。注意して見守っていきたい。