うつらうつらとして何度か薄目を開けるが、眠くて仕方ないのでそのまま眠り続ける。何度めかに目を開けた時、時計を見ると5時半。このまま再び眠入って二度寝入りの状態になってしまうと大変。だいたい二度寝入りというのは寝過ごしの原因であることは、これまでの失敗多き人生経験から痛いほど知っているので、飛び起きてしまう。荷物のパッキングをしてシャワーを浴びる。
昨夜のうちにレセプションに朝食を6時半に持ってきてもらうように頼んでおいたのだが、持ってこないので再びルームサービスに電話して持ってきてもらう。持ってきた女性は、さっき持ってきたのだが返事がなかったのでという。シャワーを浴びている間に来たのか。でもちょっと嘘っぽいんだけど…。まあ、いいか。
7時半に部屋を出ようとしたら、非常ベルが鳴り出す。何だ、何だ。廊下に出るとみんな出てきている。宿泊客全員に部屋を出て1階で待機するように放送があったのだ。フロント前は混雑している。しかしこちらはもうじき出ていく身なので関係ないぞ。
レセプションにキーカードを戻す。何か支払いがあるかと思ったが何もなし。考えみれば何も支払い対象になるようなことはしていない。電話も部屋からはかけていないし。というより、かからなかったのだが。
ところで国際電話をかけるのは本当に便利になっている。コンビニでテレホンカードを買い、その裏に銀でカバーされている箇所があるから、そこをスクラッチすると暗証番号が出てくる。£1を入れて、カードに書いてあるオペレーションシステムに電話をかけてから暗証番号を打ち込み、国際電話を示す00を押してから国番号。日本の場合は08。それから日本の電話番号を最初の0を削ってから打ち込む。それだけ。指示は全てテープで流れる。私はホテルの売店で£5のカードを買ったが、ちょっとした電話ならこれで2〜3回かけられるのではないだろうか。カードをイギリスで買えばテレホンセンターは英国なので指示は英語。日本で買ってから持っていけば、その番号は日本語の指示で流れる。しかし英語の指示といっても決まり切った英語なので全然分かりやすい。以前はこんなに便利じゃなかったなあ。電話代だって高かったし。と隔世の感。
ホテルの外に出ると、消防車が何台も通っていく。火事だったのだろう。
ピカデリーサーカス駅からヒースロー空港まではピカデリーラインで直接行ける。ヒースローはゾーン6なので£3.6。時間は45分かかる。
チューブに乗ると、This train is about to start. Please
mind the door. というアナウンスが必ず流れる。「この電車は出発いたします。ドアにお気をつけ下さい」という意味だ。あまり毎回のことなので耳についてしまったくらいだ。Mind
the gap between the train and the platform. というのもあったな。こちらは「電車とプラットフォームの間の溝にお気をつけ下さい」という意味。Please
mind the gap. というカンバッチが土産物として至るところで売られているくらいだから、ロンドン名物の言い方なのだろう。
だいたいこの mind という英語がイギリス的だ。ホテルのシャワールームにも Please
mind the step. (足元にお気をつけ下さい)と書いてあったが、こういうときアメリカなら Please watch your
step. というだろう。ここら辺がイギリス英語だなあと思う。
話はずれるが、私は鎌倉のある寺で、Please take care of your feet.
という看板を見たことがあるぞ。足元にお気をつけ下さい、と言いたいのだろうが、これでは「足を大事にして下さい」という意味にしかならず、どう考えても変だ。思わず吹き出してしまったっけ。
イギリス英語とアメリカ英語の違いは至るところにある。イギリスでは雑貨屋のことをドラッグストアとは言わない。これはアメリカ英語。イギリスではファーマシーかな。ミホちゃんに「こっちではドラッグストアとは言わないだよね」と言ったら、「えっ、ドラッグストアっていうとマツモトキヨシってイメージですねえ」と言われた。おいおい、そりゃあ君だけだろ。でもコンビニエンスストアは米英で通じるな。
エレベーターのことはリフトだし、1階のことはファーストフロアとは言わずグラウンドフロアと言う。ファーストフロアと言うと、それは2階のことになってしまう。その他にもいろいろあるが。
閑話休題。
8時半にヒースロー着。ヴァージンアトランティックV901便。チェックインしようとしたら長蛇の列。係員に「本当にここ並ぶの?」と聞くと、「長く見えるけど意外と速いから」と言われるが、とんでもないよ。1時間もかかってしまった。もっとも早めに着いてしまって時間はたっぷりあるので別に急ぎはしないけど。
10時にイミグレーションへ。朝食を取る。トラディショナル・ブレックファストというメニューが。おお、そういえばトラディショナルって食べていなかったなあ。目玉焼きとソーセージとマッシュドポテト。
公衆電話からグレンとミホちゃんに電話してお礼を言う。グレンはロンドン付近に新居となるアパートを探していたが見つかったようだ。
最後に残った£50ほどを使い切るために免税品売場へ。自分用にシングルモルト Laphroaig
を一本。『美味しんぼ』(雁屋哲/花咲アキラ)でも山岡士郎が「おお、ラフロイグの15年もの!」と叫ぶ逸品である。もっとも、こちらは10年ものだが。
1時の便なのだが、ゲートナンバーがモニターに出ない。ずっと PLEASE WAIT のまま。多くの乗客がモニターを見上げてナンバーが出るのを待っている。係員の女性が
May I help you ? とモニターを見上げている人たちに聞いている。「いや、待てと言うから待っているのさ」と私。"Thank
you, but the monitor says, "Please Wait". So I'm waiting." 気の利いたことを言ったつもりだったが、うーん、考えてみれば嫌みだったかな…。反省。
12時半にようやくゲートナンバーが。ゲート25。他の客と共にゲートの方へ。12時40分に搭乗したが、結局離陸したのは14時で、予定より1時間遅れ。
機内では「スパイダーマン」を英語版で観る。いつだったかグレンが「これまでに観た最高の映画」と言って絶賛していたっけ。しかし見てみると何てアメリカンなのかという感想しかない。映画のキーワードとなる言葉、"Great
power, great responsibility."(強い力を持てば責任が重くなる)という言葉などは世界の警察を自ら任じる強いアメリカの言葉そのままではないか。アメリカ映画ってどうしてこんなにダメになってしまったのか。それにしても、アメリカ人が絶賛するならまだ分かるけど、イギリス人が絶賛することないだろ?
そう言えば、Independence Day というアメリカ製のSF映画があって、宇宙から強大な宇宙人の円盤がやって来てアメリカは大変な危機に直面するのだが、ラスト近くでその危機を救うのは年老いたベテラン兵。彼は戦闘機に核爆弾を積んで敵に突っ込んでいき、地球(=アメリカ)を救う。日本人たる私には、どう見てもそれは神風特攻隊のイメージしか喚起しないので、呆れた私がアメリカ人の友人に「インディペンデンス・デイ」って面白くないよね、と言ったら、彼は不思議そうな顔をして、「何で?すごくいい映画じゃない?」と事も無げに言ったものだ。うーん。困ったもんだ。
映画と食事以外はずっと寝ていて、成田に着いたのは日本時間で翌日の朝9時。お疲れ様。
こうして、バッキンガム宮殿にもロンドン塔にも行かない私のロンドン旅行が終わった。
しかし、成田は蒸し暑く、夏はまだまだこれからだと告げられているような気がした。
終わり
このページの先頭へ
|