「きのこ、きのこ、あかいきのこはどくがある きいろいきのこはわらいじに みどりのきのこはゆめのなか ゆめのなか」
「またそのうた?」
「そうだよ。タッフィはしらないの? きのこのこと」
「しらない」
「うらのおやましってるでしょ。そこにぼくのひみつきちがあるのしってるでしょ。そのまわりにたくさんきのこがあるのしらないの?」
「しらない」
「しょうがないな。こんどつれてってあげるよ」
マーロンは何度かおおげさに肩を上下させながらローズピンクの唇をへのじにまげ、鳥がえさでもついばむみたいにちょんとぼくにキスをしてためいきをついた。
「そのきのこたべたことあるの?」
とぼくがきくと、マーロンは目をまあるくしてひやあああと、息をながく吸い込みながらさけび、ぼくのくちをおおげさに両手でふさいだ。
「だめだよタッフィ、これはぼくらの秘密だからね。きのこはね、ぼくのひみつきちを守ってるんだから。たべたりなんかしちゃだめなんだからね。こわいんだからね。ぼくだってやられちゃう」
「なんでひみつきちがあるの?」
「ひみつはだいじだよ。ぜったいひみつはだいじなんだ。タッフィもひみつをもちなよ」
マーロンは興奮してぼくをぎゅうぎゅうだきしめた。
「ひみつ、ひみつ、あかいひみつはどくがある
きいろいひみつはわらいじに
みどりのひみつはゆめのなか
ゆめのなか
ママのひみつ
ぼくのひみつ
ママはなんにもぜんぜんしらない
ゆめのなか
ゆめのなか」
2004年6月21日号掲載
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