机に足を投げ出して本を読みながら音楽を聴いているハルチカ。
脇にあるテーブルの上の目覚まし時計が鳴る。時間は午前二時。
ハルチカ 「ハイヨ」
アラームを止めて立ち上がるハルチカ。大きく伸びをして背中を反らせちょっとした準備運動のようなことをする。
リュックの中から長さ二十センチ位の鉄棒を取り出し尻のポケットに仕舞い込むと部屋を出ていく。
池袋 西口近辺の路地歩くハルチカ。
平日の深夜で、ほとんど人影も無い。
腕時計を見るハルチカ、午前三時を過ぎている。
公園に差しかかった所で小さな呻き声が聞こえてくる。
足音を忍ばせて慎重に近寄り様子を伺うハルチカ。
三人の若者にスーツ姿の中年男が小突き回されているのが見える。
ハルチカ 「当たり」
軽やかに走り出すハルチカ。
相手も気付き、動揺した様子。
少女二人は制服姿、少年はBボーイっぽいスタイル。
少女1 「なに、ナニこいつう」
少女2 「ねえ知り合い?」
少年に顔を向ける。
ハルチカの顔を確認しようとする少年の腹にハルチカの鉄棒を握った拳がめり込む。
少年 「なん、だよイキナリ……」
身体をくの字に曲げて倒れ込む少年のすぐ隣で中年男が怯えたようにうずくまっている。
ハルチカ 「こんばんわ」
少女1 「なんなんだよテメエッ!」
ハルチカに殴り掛かろうとする。
ひょいとよけられ代わりにハルチカの右フックを喰らい吹っ飛ぶ少女1
中年男 「ああーっ、助けて下さい助けて下さい!」
這ってハルチカの足下に近付く。
中年男の顔を蹴り上げるハルチカ。
ハルチカ 「ははは、違う違う」
足下の三人を出鱈目に蹴り始めるハルチカ。
立ち上がろうとした少年にはきつい一発を入れて気を失わせる。
呆然とたたずむ少女2、思い出したように逃げ出そうとする。
振り返り走り出そうとした所を、ハルチカに手を掴まれる少女2。
ハルチカ 「ダメー」
大きく振りかぶった頭突きを少女2に喰らわせるハルチカ。
少女2、その場で失神。
ハルチカの足下に転がる四人、少女1と中年男はまだ呻きながらも動いている。多少息は上がっているが楽しそうなハルチカ。
中年男 「……」
ハルチカ四人の持っていた荷物を一か所に集め全てぶちまける。
さらにそれぞれの財布を奪い身分証明書を抜き取る。
ハルチカ 「あれっ!」
驚いた顔で少年の顔を覗き込むハルチカ。
ハルチカ 「オマエ女だったのかよ」
少女達のものも確認するハルチカ。
ハルチカ 「えー、ああはいこっちはちゃんと見た目通りなんだ……。んで、そっかあ、オマエは男なんだ」
呻いている少女1の髪を掴み顔を確認するハルチカ。
ハルチカ 「あんまり面白くないなあ、否定はしないけどさ」
失神している少女2のほうへ中年男を引き摺るハルチカ。
中年男 「な、なにを」
ハルチカ 「いいから」
少女2の短いスカートの中へ中年男の頭を無理矢理突っ込むハルチカ。
スカートの中で頭を起こしかける中年男、その途端後頭部をハルチカに蹴られ失神。
ハルチカ 「皆ちゃんと生きてますね?」
空が紫がかってくる。
全員の財布から紙幣を全て抜き取り適当に撒いたり、少年の頭の上に乗せたりするハルチカ。
ハルチカ 「おじさん金持ってるなあ」
中年男の札入れから百万近く札が出てくる。
ハルチカ 「エライ人なのかな」
それらも全て足下の四人の上から撒いて少し遠ざかるハルチカ。
太陽が昇り始めている。
両手をポケットに入れてしばらく被害者達を眺めるハルチカ。
ハルチカ 「こんな景色の中でも、金だけはいつも、唐突にリアルだな」
寂しげにつぶやき、立ち去る。
2007年9月26日号掲載
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