ハルチカのアパート キッチン 

ハルチカがビール持って戻ってくる。食器を洗いながら何気なく訪ねるすわん。

すわん  「美味しかったけど、なんのお肉だったの?」

ハルチカ 「犬」

すわん  「うそ」

顔を強ばらせ手が止まるすわん。

ハルチカ 「ホントだよ」

ゴミバケツから足の骨の部分を取り出す。

ハルチカ 「生きるために殺してんだ。一応戦って。文句あるかよ」

すわん  「どうして犬を食べさせたりなんかしたのよ……」

体が震える。

すわん  「もう、死んじゃったけど、犬を、飼ってたの。あたしに凄く懐いてて、かわいくて……」

泣いてるすわんを無視して、パソコンを立ち上げるハルチカ、椅子に腰掛けるがすぐに立つ。

ハルチカ 「悪かったよ」

すわん  「意地悪なの?それともなんか試したの?」

ハルチカ 「別に、いつも通りだ」

真顔で答えるハルチカ。ふてくされている。

ハルチカ 「お前もう帰れよ……」

すわん  「でも、でもすごく、美味しかった。あんたの言ってることをすぐには解らないし、まだ吐きそうだけれど、ホントなら間違っては、いない気がする」

少し驚いてすわんを見つめるハルチカ。

ハルチカ 「変なやつ」

すわん  「美味しかった、ホント」

涙を拭いながらハルチカのそばへ来るすわん。

すわん  「ビール飲んでもい?」

ハルチカにも勧めるが断られる。
が、手を引いて椅子へ座らせ、強引に乾杯をする。
暫し談笑。
酔ったハルチカがベッドに横になると、すわんが嬉しそうに体を絡ませてくる。手で押しやるハルチカ。構わず服を脱ぎ始めるすわん。

ハルチカ 「なにしてんだよ」

すわん  「やろうよ」

遊びに誘うような感じ。ちょっとたまんない。

ハルチカ 「こういうこと、よくすんですか?」

すわん  「よくする。誘われれば誰とでも。あたしからは初めてだけど」

ハルチカ 「やめろよ」

すわん  「あんたもインポなの?」

瞬間素に戻るすわん。

ハルチカ 「いや、そんなことはないと思うけど」

すわん  「……ないけどお?」

ハルチカ 「したことねんだよ、こうゆうこと」

すわん  「ウソでしょ?」

ハルチカ 「や、マジ」

すわん  「ふふ、じゃキスだけ」

おもむろにハルチカの唇を奪うすわん。
愕然とするハルチカ。幼い自分に母親がキスしていた光景かフラッシュバックし、すわんを突き飛ばす。

すわん  「ごめんなさい……怒った?」

無言でヘルメットを引っ掴んで、部屋を出ていくハルチカ。
すわんがどうしていいか解らないといった感じであとを追う。
が、構わずバイクに跨がって火を入れる。
ヘルメットを被りながら唇を拭うハルチカ。

すわん  「ごめんなさい、悪気はなかったの! また、会いに来てもいいっ?」

叫び声をかき消すように走り去るモンスター。取り残されるすわん。

2007年11月12日号掲載


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