楽しいお買い物。
両手にがさがさとビニールを下げて街を歩く二人。
ふと立ち止まるハルチカ。気付かないすわん。
すわん 「どしたの?」
戻ってくる。
ハルチカ 「あいつそうだ」
ハルチカの見つめる先に、中学生くらいの少年が、7、8歳の少女の手を引いて雑踏を歩いている。
すわん 「なにが?」
ハルチカ 「もしかしたらあのガキ、これからあの女の子のこと殺すかも知れないよ」
すわん 「うそでしょ、だってあれ兄妹じゃない?」
ハルチカ 「違うと思う。大したもんだよ、あの歳であんなのは」
すわん 「どういう意味なの?」
ハルチカ 「初めてじゃないんだろ、あいつ人殺すの」
すわん 「ちょっ、なに言ってんの、止めなくちゃ」
ハルチカ 「いや、絶対そうとは限んないし、まだ何もしてないじゃん」
ハルチカを無視して、雑踏に消えそうになる少年たちを追いかけるすわん。
ぶらんこに並んで腰掛けてジュースを飲みながらお菓子を食べたりしている少年達。少し離れた場所でドキドキしながら見守るすわん。
かったるそうに立ってるハルチカ。
ハルチカ 「言うんじゃなかったな……」
何処か嫌がっている様子の少女の手を、無理に引っ張る感じで少年達が去っていく。慌ててハルチカの腕を引っ張るすわん。
小走りで何度も後ろを振り返りながら境内に入ってくるすわん。大分遅れて、呆れたような様子のハルチカが来る。
すわん 「こっちの方だったよね、もう何分くらい見失っちゃったかな」
上がった息を押さえて、ハルチカに小声で言うすわん。
すわん 「もうどっかいっちゃったかな?」
きょろきょろするすわん。ハルチカ暑いのでげんなりしたような様子。
ハルチカ 「近くにいるよ」
すわん 「ホント、どこ?」
ハルチカ 「あのさ、いいよあんなの。行こう」
すわん 「お願いだから! どこにいるの? 殺されちゃったらどうするのよっ」
すわんの気迫に負けて渋々社の方を指さすハルチカ。
現場樹に囲まれて死角になった場所で、少年が少女のパンツを引き下ろそうとしている。
少年 「静かにしてないと、お前がこういういけないことしてること、パパとママに言っちゃうからな」
息を荒げる少年、泣いている女の子の顔は写らない。
立ち上がりデジカメで少女を撮る少年。
シャッターが切られたときだけ、少女の全身が一瞬見えるといった感じ。
少年 「お父さんもお母さんも河上君の言うことは信じて僕だけが変な考え持ってるみたいに。大体へぼい大学出たくらいで偉そうに先生呼ばわりされてるからあんな愚かな行動にでるんだよ、何様だと思ってんだ自分の物差しがどの程度だってんだバカ」
リュックからハンカチを出して少女の口に詰めガムテープで塞ぎシャッターを切る。
少年 「お前が悪いんじゃないよ、お前のパパが悪いんだ。選ばれた人間を解る能力もなければ、神も悪魔も信じてない、中学の先生なんかやってるパパが悪いんだよ」
少女の頭を撫で、優しげに言う少年。
少女の顔や腹をムチャクチャに殴りつけている少年の後ろ姿。
慎重に近づくすわん、物陰から少年を見つけ、スーパーの袋の中身を漁っていたハルチカに合図をする。
さらにリュックからナイフをとりだす少年、同時にポータブルMDも出してヘッドフォンをつける。(クラッシュのブランニューキャデラックでもいいしサティの「家具」でもディーボでも松田聖子でも)フルボリュームで酔い痴れる。
失禁する少女。下半身のみ。
普通に近づいてくるハルチカ。
気付かない少年。
ハルチカに駆け寄るすわん。
すわん 「助けてあげて!」
ハルチカ 「面倒くさいよ。どうせ警察とかに呼ばれるんだろうし」
すわんの手を掴んで帰る素振りを示す。
思い出したように立ち止まり、すわんに顔を近付けるハルチカ。
ハルチカ 「いった通りだったろ?」
少し得意げに笑う。
すわん 「……!(怯えて顔が歪む)」
そこへ少女のくぐもった悲鳴が聞こえ、反射的にハルチカの手を振りほどくと少年に向かって走るすわん。
ハルチカ 「やめとけって!」
2007年12月3日号掲載
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