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 DJとは何だろうと考える。

 DJをやりたいんですという若い人も多い。DJ機材もたくさん売っていて、DJの雑誌やDJのやり方の本も出ている。だけどDJをやりたくてDJをするっていうのはどうもよく分からない。まず好きな音楽があって、それをかけたいというのが動機であるはずではないかと思うからだ。でないと、DJのためのDJになってしまうと思う。

 リミックスをしたいというのならまだ分かる。それはクリエイションの一部だと思うから。だがDJそのものはクリエイションといえるのか。手っ取り早い、創作の代替行為をDJの名の下に粉飾しているのだとしたら、それはかなりまずいことなのではないかと考える日々。

 さて次のリストは昨年12月6日にかけたもの。


01
Pandora / Anna Domino
前回の続きでアンナ・ドミノ。この曲も素晴らしい。

02
Over the Bend / Hilmar Orn Hilmarsson
イギリスの映画のサウンドトラックとしてリリースされたアルバム Angel of Universe から。葬送の音楽。アルバムの最後の2曲は Sigur Ros。この曲は4曲目に収録されている。静かに始まり途中にパーカッションが入りまた静かに終わる。美しい曲。シガーロスのアルバム同様、Fat Cat Records から出ている。

03
Sunken Love / Rip Rig & Panic
Toe Pop Group 解散後ソロになった Mark Stewart と Pig Bag, Maximum Joy はかけたが、もう一つのバンドがRip Rig & Panic だ。3つのバンドの中では最もフリー度が高い。God というファーストアルバムと I Am Cold というセカンドを出し、 Attitude というサードを出した。ファーストとセカンドは、12インチ45回転の2枚組という構成で出されている。音質を高めるためだ。このバンドの作品は何故か長い間CD化されていなかったが、最近全てCD化された。この曲はサードアルバムから。比較的聞きやすい。

04
Confusion / New Order

05
The Camera / Karl Bartos
クラフトワークのメンバーだったカール・バルトスの最近のソロアルバムから。ノリが良い。

06
On the Retina / In Camera
今回の目玉はこれだ。

このバンドは4ADレーベルのバンドだった。ここで4ADについて説明しておかなければならないだろう。このレーベルは1980年代マンチェスターのファクトリーと並んでイギリス、また世界中で注目のレーベルだった。最初にこのレーベルを有名にしたバンドは Bauhaus だろう。ちょうど Joy Division のデビューを重なる時期だったので、同じようなイメージで最初はとらえられたが、私たちはその違いにすぐ気がつき、Joy Division はリスペクトしたが、Bauhaus は聴かなくなった。

とはいえ、このレーベルはその後 Cocteau Twins など幾つかの無視できないバンドを世に出した。でも私たちは4ADに対してちょっと退いた見方をしていたことは確かだ。

このバンド、In Camera もそうしたバンドのひとつで、悪くはないがそれほど良くはないと思っていた。もう10年以上前にこのCD "13 (Lucky for Some)" をたまたま買い、良くないと思いあまり聴いていなかったのだが、今回聴き直して最後の4曲が異様に輝いていることを知った。

このアルバムは日本版なので日本語によるライナーノーツがついているが、それを読むとこのバンドは数枚のシングルだけを出しアルバムを出さなかったらしい。それでCDを出すことになった時に曲が足りなくて、再結成して4曲新しい曲を追加した。それがCDの最後に収録されている。

今の彼らがこんなに素晴らしいのなら、是非このまま続けてほしかった。

07
Rez / Underworld
アンダーワールドのライブが最近日本であって、クリス・ヘイルら私の周辺の友人たちが聴きに行った。私はこのバンドについてほとんど知らなかったのだが、ライブから帰ってきた友人たちがこのバンドの話をするので、聞いてみた。かっこいいテクノだったので、早速CDを買ってきてかけた。この曲は彼らの代表曲のひとつ。

ちなみにクリスによると、このバンドは日本では人気があってたくさん日本盤が出ているが、アメリカではあまり人気がないとのこと。へえ。

08
Stella / Ultramarine
今回の目玉のひとつ。

クレプスキュールレーベルのバンド。最初に聴いたのは、Crepuscule for Cafe Apre-Midi というカフェ系というコンセプトで作られたCDの中でだった。とてもすきになった。調べてみると何枚かアルバムが出ている。この曲はそのオムニバスにも入っているが、Every Man And Woman Is A Star というアルバムに収録されている。以前に彼らのアルバムを探しにディスクユニオンに行ったという話は書いたが、あのときは見つけることができなかった。その後アマゾンで見つけて買った。彼らの音楽を説明するのは難しい。

いかにもクレプスキュールらしいノンジャンルというか、ボーダーレスというか。

とても良いです。

09
Hysteria / Mark Stewart
第4回にかけた曲と同じくアルバム Metatron から。

10
Extract from the Messiah / Slapp Happy
これも以前かけた曲と同様、Casablanca Moon / Desperate Straights から。

11
Globatures / Klimperei
これも以前かけたのと同じく、Tout Seul Sur La Plage En Hiver から。

12
My First Hommages / Gavin Bryers
今回のもう一つの目玉はこれ。ギャビン・ブライヤーズは、かつてブライアン・イーノが1975年から始めたオブスキュアレーベルから、The Sinking of the Titanic というアルバムをリリースした現代音楽の人。このアルバム Hommages はクレプスキュールから1981年にリリースされている。TWI027のナンバリングがしてある。アマゾンのレビューを見ると現在入手は困難とのこと。

レコードは昔風の二つ折りになっている。ピアノによるアンビエントミュージック。中にブライヤーズ自身の解説があるが、それを読むとジャズピアノ、とりわけビル・エバンズへのオマージュとされている。

私はこのレコードを買ったときブライヤーズの他の作品を聴いていなかったが、クレプスキュールレーベルもブライアン・イーノもリスペクトしていたので買った。買ってその良さに驚いた。イーノとハロルド・バッドのコラボレーションアルバム The Plateaux of Mirror に匹敵する傑作と思い、愛聴していた。

現在は私の知り限りでは、この曲は、クレプスキュールのオムニバスCD、Crepuscule for Cafe Apre Midi 2 に入っているので聴ける。この曲、実は14分以上の大作なのだが、そのオムニバスでは10分ほどになっている。

だいたいDJでこんな長い曲をかけるのはどうかと思うが、そうしてもかけたくてかけた。

静かな終わりである。

2006年3月6日号掲載

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