p r o f i l e

 

 1970年代後半のある年の暮れ、ぼくはある地方の町の近くの田舎に住んでいて、高校生だったか、大学受験に落ちて浪人をしていたか、どちらかだったが、大晦日の日に町に出て帰るバスに、友人が乗り込んできた。彼は買ってきたばかりのレコードと本を持っていた。それは何、と問う私に彼は誇らしげに、The Doors のレコードとオルダス・ハックスリーの『知覚の扉』という本を見せ、ドアーズというバンド名はこの本のタイトルに由来するのだと説明してくれた。

 もちろんその時点でドアーズはもういない。ボーカルの Jim Morrison は1971年に滞在先のパリで死んでいる。死因はいまだに不明とされている。ドアーズは1960年代を代表するバンドのひとつである。1967年にアメリカ西海岸でデビューし、5枚のアルバムを残し、ジム・モリソンの死を経て1972年に解散している。しかし1970年代終わり頃の日本でも、そのバンド名はボーカルリストの謎の死のこともあって、伝説的な色合いで語られていたし、その音楽はさほど時代遅れにもならずに聴かれていた。

 The Doors は、Velvet Underground と並んで、パンクを経た1980年にもリスペクトされていた希有のバンドだった。

 そしてこのバンドが、田舎の高校生を当時最先端の音楽世界と導く扉だった。

 どうも話が長くなりそうなので、続きは次の機会に。

 さて次のリストは、2006年3月28日の夜にアストロ・ラウンジでやったDJリスト。


01
Resonator / Cabaret Voltaire
何度もかけているバンド。

私は、昨年 Made in Sheffield - The birth of electronic pop というDVDを買って見た(監督は Eve Wood という人)。1970年代後半から1980年代の初頭にかけてイギリスではパンクとポストパンクの流れの中で多くのバンドが出てきたが、その中でもマンチェスターとシェフィールドは大きな役割を果たした町だ。マンチェスターには Factory Records という強力なインディレーベルがあり、多くの魅力あるバンドを世に送り出すことに成功していたが、シェフィールドにはおもしろいバンドがたくさんいたにもかかわらず、強力なレコードレーベルがなかったことで、ムーブメントを作れずにいた。

その中で、最も成功し世に知られたのがこのバンド Cabaret Voltaire である。当然私も何枚かレコードを持っているが、なかなか聴きにくいぞ。細かいことはまたの機会に。だってこのバンドを紹介するのはなかなか大変なんだ。

ちなみにこのCD、Plasticity はとても聴きやすい。

02
Zoolookalogie / Jean Michel Jarre
前の週にもかけたレコードから。

 
03
Fade Away / New Age Steppers
Adrian Sherwoodが作ったON-U SoundというレーベルのプロジェクトNew Age Steppersの1980年の同名のファーストアルバム、第1曲目。ダブである。参加メンバーはThe Pop Group、The Slits、Creation Rebel、と錚々たる面々。

New Age Steppers はバンドではなく Adrian Sherwood のプロジェクトなので、毎回メンバーは異なる。

1981年にセカンドアルバム Action Battlefield、1982年にサードアルバム Foundation Steppers を出して終わる。

この曲は聴きやすく、何度も聴いていると癖になる。

04
Deflowered / In Camera
このバンドについては説明済みなので省略。

05
Waterline / A Certain Ratio
このバンドについても説明済みと思うが、一言だけ言うと、「この曲、暗いけど、かっこいいです」。

06
Happy Violentine / Miss Kittin
ハッピーバレンタインではありません。バイオレンタインです。2004年のアルバム I Com から。

07
Born Slippy .Nuxx (Deep Pan) / Underworld
1996年のマキシシングル born slippyから。タイトル曲の3ヴァージョンの他、3曲収録。

今週は何をかけようかと考えていて、困るとこのバンドから何か選ぶ。困ったときのアンダーワールド。つねに適度にかっこよく、無難だから?なんて言うとファンに怒られそうだが。

08
Showroom Dummies / Kraftwerk
1977年のアルバム Trans-Europe Express から。当時ディスコでよくかかっていたという話を読んだことがあるが、そのころ私はほとんどディスコに行ったことがないのでよく分からない。

09
Just For A Moment / Ultravox
Ultravoxについては以前書いた。1978年のアルバム Systems of Romance から。スローな曲。

10
Eclipse / Autumn's Grey Solace
2005年のアルバム Riverine から。何と、キーボードとシンセを全く使っていないとジャケット裏に書いてある。

このバンド、一般的にはまだまだ全くの無名だろう。だが素晴らしいバンドだ。友人のクリス・ヘイルが教えてくれた。彼は Pandra というサイトで見つけたと言っていた。

あれ、最近このサイトについて、吉田編集長、何か書いてなかったっけ? この頃、クリスもすごいサイトだと興奮して言っていた。

11
Malcolm's Loop / Another Fine Day
これもクリスからの紹介。何かの雑誌の付録でついていたCDだと言っていたような気が。癒し系?

12
Sombre Reptiles / Brian Eno
これは古いです。1975年のアルバム Another Green World から。

ところでこの曲、NHKの番組で使われたりしていないかな。いかにもそういう感じの曲なんだけど。

また来週。

2006年6月5日号掲載

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