Kに会うために京都へ行く。突然の思い付きだったけど、紅葉シーズン中にかかわらず宿がとれた。外国人バックパッカーむけの安いホテルで、長期滞在できるように小さなキッチンのついた部屋もある。二泊だけだったがキッチンの付いた部屋にした。なにか、作ってふたりで部屋で食べようと思った。ふたりだけの生活が即席だけれど、京都の片隅に三日間だけできた。
Kは大陸を旅ばかりしていたので、町中でもトレッキングシューズのようなごつい靴を履いて、とにかく信じられないくらい歩く。いつもはほとんどどこにもいかないのに、今回はわたしの希望で観光をした。ホテルが隣接した御所内、百万遍、北野天満宮まで歩いて嵐山までいった。さすがに嵐山までは電車をつかったけれど。嵐山では山から下りる途中で間違えて駅までまたひどく歩く。歩いてみれば、観光客で賑わう場所はほんの一部で、あとは鴨川の河川敷も御所内も、人影もまばらでさみしい。そんなさみしい場所ばかりを歩くと、はた織り機屋さんやよしず屋さんなどいろいろ見つける。松ぼっくり二箇。松の実二つぶ。落ち葉二枚。シイの実一つなど拾う。
鴨川でひとやすみしていると、カモ、ゆりかもめ、鷺などがいて、トンビがそれらを追い払うように低く旋回している。カモメやトンビを見ながら、ひとって生き物にいろいろなイメージを勝手につけるよねえ。などと話す。トンビと鷹はどっちがえらいということもないのに失礼な話だなどなど。九鬼周蔵の本のはなしをKがする。
防空壕だったという暗い地下のカフェにいく。お茶を飲んでいると、Kが学生時代にタイムスリップしたみたいだ。という。
錦市場でうどんを買って、火力の弱いコンロでなんとかうどんすきを作って食べる。歩き疲れたのかぐっすり眠る。突然、夜半に目覚めて泣く。どうしてかとKがたずねる。答えられない。離れて設置してあるふたつのベッドをKがくっつけてくれる。そのまましばらく子供のように泣く。
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